7月1日JIAM全国市町村議員研修「将来の社会保障の姿を考える」要旨
- 7月1日JIAM全国市町村議員研修における兵庫県立大学大学院香取照幸教授講義「将来の社会保障の姿を考える」から
- Ⅰ 超高齢社会のイメージ
- (1)人口推移
- 1500年 人口1000万人
- 江戸幕府 戦争無く人口増加3000万人
- 1868年 明治維新で人口急増
- 1967年 人口1億人突破
- 2008年12月 総人口ピーク12,810万人
- 2023年 12,441万人
- (2)85歳以上人口が増えると何が起きるか。
- 2035年;85歳以上の高齢者が1000万人
- 85歳を超えると、半分は要介護、4割は認知症
- 医療機関の外来は減少、訪問診療は増加する。(通院できない)
- 救急搬送も増加する。その主力は後期高齢者、特に85歳以上高齢者
- (3)今後の方向性
- ①医療と介護の一体提供 → 地域包括ネットワーク
- ②在宅医療の強化「地域完結型医療」 → かかりつけ医機能の強化・開業医とそれを支える地域密着病院
- ⇒ 地域医療構想と地域包括ケアは車の両輪
- 2 人口減少が地域に与える影響・・・更なる人口減少
- 生活関連サービスの縮小(小売業・飲食業・医療福祉・娯楽)
- 税減収(市町村の財政基盤の弱体化)による行政サービス水準の低下
- 地域公共交通の撤退・縮小
- 空き家・空き店舗・工場移転跡地・耕作放棄地の増大
- 空き家率の増加
- 地域コミュニティの機能低下・共助機能の低下
- 学校の統廃合
- 3 人口減少の特性
- 人口は全体的に減るが、人口規模の小さい所が多く減る。
- (保育)幼稚園ニーズは減少、保育所ニーズは増加
- (学校)児童生徒数の減少により、小規模校や廃校が増加
- (高齢者)東京圏を中心に、高齢者(特に医療・介護ニーズが高まる85歳以上)が2040年にかけて増加。
- (高齢者)一人暮らし高齢者が増加。地域での支え合いが弱い。
- (インフラ)老朽化したインフラ・公共施設が大幅に増加。
- (公共交通)乗合バス・鉄道の廃止路線が増加。
- (空間管理)都市では人口減少により、「都市のスポンジ化」やDIDの低密度化が進行。
- (集落)中山間地域では、集落機能の維持が困難となるような低密度化が発生する恐れ。
- (中略)
- 6 地方再生・定住圏・コミュニティ
- ・人口減少=地方の消滅 という目の前にある危機に目を奪われ、人口減対策に力点が置かれていました。
- ・人口減少する地域は、人口が流出するのは、仕事がない、雇用がない、産業がないからだとして、「まち、ひと、しごと創生」が大きな目標になりました。各自治体が競って「産業づくり」事業に取り組み始めました。しかし、身の丈に合っていない事業に取り組む自治体もありました。
- ・もともと、「人口減少に合わせ身の丈に合ったまちにダウンサイジングする」ことを意味していたコンパクトシティが「地域公共インフラの再構築」みたいな話になり、人口流出を止めるためのタワマンまがいの「人口集積型都市再開発」を始めた自治体も出てきました。
- ・そもそも人口減は日本全体で起きていることで、そんな中で若者の取り合いをしても、「ゼロサム」になるだけ、日本全体の人口減対策にはならない。「地域間競争」をしても意味がない。
- 7 私たちはどうするか
- (1)地域包括ケアの深化
- 地域包括ケアシステムは、地域共生社会を実現するための手段
- ・地域包括ケアシステム ⇒ 全世代・全対象型地域包括ケア = まちづくり
- まちづくり → 都市部-地域コミュニティの再生
- 地方 -地方創生
- 8 地方自治体が行う少子化対策への疑問
- (1)少子化の要因
- 2010年から2019年の住民基本台帳移動報告のデータ分析を行ったところ、47都道府県のうち37エリアで男女とも転出が転入を上回っていた。女性に限ると、38エリアで転出が上回っていた。女性の転出超過の38エリアで分析したところ、純減数の多いのは22歳が抜きんでて多い。次いで18歳、20歳である。大学進学で転出し、戻って来ない実態が明らかである。
- 日本の出生率向上のためには、『共働き・共育てモデル』が社会規範として確立されることが必要。
- 結婚意欲も子ども希望も年収しだい
- 所得の高い階層ほど子供を欲しいと考えている。子供なし世帯の割合は専業主婦の方が多い。共稼ぎ世帯の方が子供の数が多い。
- (2) 国や自治体が行う政策
- ①女性の就労(自立)の場を確保すること
- ②結婚しても仕事を継続できる(世帯収入が減らない)条件を整備すること
- ・女性が転出する理由は、「やりたい仕事がない、やりがいのある仕事がない」であり、人口問題は労働問題である。
- ・40代・50代の人が就職活動したころは買い手市場だったが、今は「売り手市場」である。自分に合わないと思ったら、さっさと見切りをつけて別のエリアや業種に就職する。
- ・多様な価値観をもつ人々が自由に動く時代に、地元が選ばれるためには、寛容性への理解においてシビアな感覚が必要。
- ・自治体は、まずは企業の管理職層の啓発をしてほしい。地方の雇用環境をつくる人たちが家族観や労働の価値観をアップデートして行動に移さない限り、人口流出を止められないだろう。
Copyright ©鯖江市議会議員 東井ただよし
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